認知症の治療薬は、認可された薬でも、副作用によって症状が悪化したり、複数の治療薬の服用や、用量用法についても議論がされ、認知症患者を悩ませています。
認知症の中でも大きな割合をしめるアルツハイマー型認知症の治療薬はどうなっているのでしょうか?
今回はアルツハイマー型認知症の治療薬についてまとめました。
認知症の進行を遅らせる薬一覧
2016年1月の時点では、アルツハイマー型認知症の治療薬は、アリセプト、レミニール、メマリー、イクセロンリバスタッチの4つがあります。これらの治療薬は、アルツハイマー型認知症の進行を遅延させる目的で使用されています。
それぞれの薬には特徴や副作用などが違います。以下一覧表にて紹介します。
商品名 | アリセプト | レミニール | メマリー | イクセロン、リバスタッチ |
---|---|---|---|---|
薬品名 | 塩酸ドネぺジル | ガランタミン | メマンチン | リバスチグミン |
薬の目的 | ドネペジルの目的は、神経細胞の神経伝達物質であるアセチルコリンを増やす事です。 | ガランタミンの目的は、神経細胞の神経伝達物質であるアセチルコリンを増やす事です。 | メマンチンの目的は、グルタミン酸濃度を下げる事です。 | リバスチグミンの目的は、神経細胞の神経伝達物質であるアセチルコリンを増やす事です。 |
薬剤形状 | 錠剤、ゼリー剤、ドライシロップ剤 | 錠剤、内用液 | 錠剤 | 貼付剤 |
対象症状 | 中核症状 | 中核症状 | 周辺症状 | 中核症状 |
適応するレベル | 軽度~高度 | 軽度~中度 | 中度~高度 | 軽度~中度 |
用法用量 | 1日1回、3mgで開始。医師の判断で1日1回、10mgまで増量することがある。 | 1日2回、1回につき4mgで開始(1日で8mg)。医師の判断で、1回につき12mgまで増量することがある。 | 1日1回、5mg、1週間以上の経過観察の上、1日1回、10mgに増量していく。医師の判断で1日1回、20mgとすることがある。 | 1日2回、1回につき4.5mgから開始。4週間以上の経過観察後、医師の判断で、1回につき18mgまで増量することがある。 |
副作用 | 興奮、暴言、暴力、歩行障害、嘔吐、下痢、頭痛、眠気、不眠、手のふるえ、口唇のふるえ | 嘔吐、下痢、食欲減退、動悸 | 眠気、けいれん、失神、めまい、便秘、体重減少、頭痛 | かゆみ、かぶれ、食欲不振、下痢、頭痛、眠気 |
備考 | 1999年、国内で最初に認可された認知症治療薬です。副作用で興奮してしまい落ち着かなくなってしまい、薬を中断することが多いようです。 | 2011年に国内で認可された認知症治療薬です。アリセプトや、イクセロン、リバスタッチとの併用はできません。 | 2011年に国内で認可された認知症治療薬です。アリセプトのように興奮の副作用は見られないですが、肝機能障害の副作用があることが心配されています。 | 2011年に国内で認可された認知症治療薬です。認知症の薬の中で唯一の貼るタイプの薬です。 |
製造会社 | エーザイ株式会社 | ヤンセンファーマ株式会社(武田株式会社) | 第一三共株式会社 | 小野薬品工業株式会社 |
認知症を根本的に治療する薬はまだない
近年、脳のメカニズムの研究は進んでいます。アルツハイマー型認知症の原因は、アミロイドβなどのたんぱく質が、溜まってしまって、神経細胞を破壊することと考えられていますが、それが「いつからどのようにはじまるのか?」といった、脳のメカニズムの変化過程が解明されておらず、治療薬の研究開発も困難を極めています。
アルツハイマー型認知症の治療薬の副作用
アリセプト
薬の効果で意欲が向上したり、会話が増えたり、表情が豊かになったりしますが、一方で興奮して暴言や暴力などがみられることがあります。
いままで穏やかで温厚だった人が、人が変わったかのように別人格になってしまうかのようなこともあります。
認知症患者が興奮し暴言や暴力があったら家庭が崩壊し、悲惨な状況になってしまいます。
このような副作用は、薬の服用をはじめたタイミングや、薬の量を増量したときにみられます。アリセプトの服用を中止し、他の薬に切り替えたら副作用がなくなったという事例も多くあります。
レミニール
レミニールは他の認知症の治療薬で、神経伝達物質のグルタミン酸の働きを抑える作用があるメマリーとの併用はできますが、神経細胞の神経伝達物質であるアセチルコリンを増やす作用のあるアリセプトや、イクセロン、リバスタッチとの併用はできません。
レミニールの副作用は吐き気、食欲の低下、下痢などの消化器系が多いです。
このような副作用は、薬の服用をはじめたタイミングや、薬の量を増量したときにみられるので、慎重に医師と相談すべきでしょう。
メマリー
メマリーは認知症の初期症状には、効果が薄いと言われています。認知症の症状が中度以降に、アリセプトからメマリーに切り替える、もしくは併用することが多いです。
切り替えた瞬間から、眠気がひどくなったり、めまいや立ちくらみ、歩行困難などの副作用が出ることが多くあります。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構はメマリーに重大な副作用として「肝機能障害や黄疸」があると発表しています。医師としっかり相談しましょう。
イクセロン、リバスタッチ
イクセロン、リバスタッチは貼り薬なので、多いのは皮膚にかゆみやかぶれの副作用がみられやすくなります。
他の薬と違って貼り薬なので、認知症患者でも比較的拒否することは少ないですが、毎日同じ場所に貼ってしまうと、かぶれていまします。肩や背中でちょっとづつずらして貼ってあげたほうがいいでしょう。
イクセロン、リバスタッチは認知症の症状が軽度のときに効果があるといわれており、高度な症状になるとアリセプトに切り替えることが多いです。医師と相談の上、対応することが大切です。
認知症の治療薬まとめ
認知症の薬は、現時点ではアルツハイマー型認知症の進行を遅延させる目的で使用されており、認知症を根本的に治療する薬はまだありません。
代表的な上記4つの治療薬以外にも今後研究開発が期待されています。
認知症の薬の効果や副作用は、個人差があり、世の中に出ている情報でも様々な事例があります。
医師に相談することは大事ですが、あまり信じすぎるのは禁物です。
正しい最新の情報の入手を欠かさず、認知症患者にあった治療方法をみつけてください。
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